リスクに向き合う文化をつくる。ゼロリスクはありえない。片田敏孝氏講演。
令和3年(2021)7月29日
午後から、片田敏孝氏の『東日本大震災から10年~危機に主体的に備えるために~』という演題による講演を聞く機会を得ました。
気が付いたら、講演が始まるとすぐに、夢中でメモをし続けていました。それは、今の社会全体の災害に対する考え方について、とてもモヤモヤするものがずっと私の中にあって、その私の中のモヤモヤが解消されるような言葉が次々と片田氏から発せられて『合点!』の気持ちから、できるだけ書き留めようと必死でした。
災害についてといいましたが、よく考えてみると、災害に関してだけではありません。もっと色々な事につけて、何かとです。この社会は大丈夫なのかな、と心配になる程のモヤモヤをもっています。
この講演は防災についてですから、ここでは災害についてのモヤモヤとします。
防災対策は、これからも必要であるが、対策には限界があり、いくら対策を重ねても、その対策を越えて生じるリスクに向き合わなければならないが、なかなか向きあえないで、何かのせいにしてしまう傾向がある。その何かが行政であることが多い。 (その対策を越えて生じるリスクのことを、片田氏は残余のリスクと言われています)つまりリスクに向き合う『文化』をつくることが、今の社会には大変重要であるということです。言い換えれば、今の社会は、リスクに向き合うことができていない!!ということです。何かに頼りっきり!自分で判断しようとしていない!ということです。 そして、今の社会は『ゼロリスク』を求めすぎて、自分で考えて判断しようとしない社会になってしまっている、つまりしつこいようですが、リスクに向き合おうとしなくなっている、というのです。
実に耳が痛いことですが、こうした現象を耳が痛いとも感じていない社会になってしまっていると思います。
だから、はっきりしない不確かなことでも平気で危険、あるいは不正と決めつけて、リスクを煽り、そうやって煽ることが『正義』と全く勘違いしている言動、活動が多くみられます。
真剣に友人や知人と今の社会の話をするときは、いつもこうした現状に意気投合します。そして大変危惧します。
話を戻しますが、防災についてです。これからも対策は必要です。しかし、それには限界があることを社会は理解しなくてはならない。対策をしてもその効果が出ない時、今の社会はそのことを責めるだけ責める文化になっている。全部とは言わないが、そうした傾向が強い。責められる側は、責められるからまた対策をする。そしてまた、先ほどの残余のリスクが発生していまい、同じことの繰り返しをしてしまう、と話されてました。
本当にその通りです。
まさに、悪循環が生じ、その結果、何も進まなくなり、人々にとってメリットは一つもないと思いますが、それに気がつかないでいるように思えてなりません。
こうした今の社会の傾向に対して「そうした意識の文化を変えなくえてはならない」という言葉を何度も講演の中で片田氏は使われていました。
本当にそう思います。
最後に防災の実効性の鍵は、『個人』と『地域』にあるということを話されました。それは、日頃の防災教育によるものであるとし、防災教育は非常に大切で、東日本大震災の際の釜石市の子ども達のうちの被害にあった子どもが少なかったのは、日頃の防災教育の成果であるということでした。しかし、時として間違った防災教育が行われてしまうこともあるというのです。それは、
立派な防波堤が建設され、その防波堤ができたから、ある家のおじいちゃんは津波がきてももう逃げなくて よいとお孫さんに話していて、孫はそれを真に受けて、防波堤のおかげで逃げなくてよいのだ、と思ってしまいます。でも防波堤の高さより高い波が来た時には、逃げなければ命を落としてしまいます。つまり、リスクに向き合わなくなってしまうのです。防波堤は対策ですが、その対策が必ずしも万全ではない、ということを常に頭におき、行動をしなくてはいけないということなのです。これが「リスクに向き合う」ということで、「ゼロリスク」ということは決してないということなのです。
兎に角、一貫していえるのは、まずは「自分の命は自分で守る」という意識改革、意識教育に重点をおくことを講演の中で強調されました。
まずは、そこだと思います。その意識が前提で、助け合い、励まし合って、災害を乗り越えていくことが必要だと思います。
それにしても、いつから『ゼロリスク」を求めすぎる社会になってしまったのか、何がそうさせてしまったのでしょうか・・・
数日前に日程が決まったことですが、私の地域では防災に関する作業を急ぐことになっています。それはコロナ禍で避難所の考え方が変わりましたので、『鎌倉第二小学校ブロックの避難所マニュアル』を作成したメンバーの間で、コロナ禍のようなウイルス感染拡大を防ぎながらの避難所の在り方を考え、その考えを盛り込むための改訂作業をするめる予定になっています。